ひとり旅の安全対策にフェイク着信を:海外旅行の防犯ガイド
ひとり旅の安全は、アプリひとつでは守れません。暗くなってからの到着から様子のおかしいタクシーまで、予約したフェイク着信を安全対策にどう組み込むかを、出発前チェックリストとあわせて紹介します。
B執筆:Baptiste Garcia
このページの内容
結論
フェイク着信アプリは、ひとり旅の安全対策として「忙しそうで、誰かに待たれている人」に見せるための静かな手段です。到着前に予約しておけば、しつこい物売りを断りたいとき、様子のおかしいタクシーの行き先を変えたいとき、ゲストハウスのチェックインで誰かに待たれているように見せたいときなど、必要な瞬間にそれらしい着信が鳴ります。身を隠すための道具ではなく、相手に手を出させないための抑止策です。もっと大切な習慣と組み合わせましょう。旅程と現在地を共有する、連絡する時間を決めておく、出発前に現地の緊急番号を保存しておく。正直な限界もひとつ。フェイク着信は対人の場面を切り抜けるための道具であって、本物の緊急通報の代わりにはなりません。ひとり旅は、自分への最高のごほうびのひとつです。そしてたいていは、思い描いていたとおりに進みます。それでも、頭の片隅の小さな警戒心が消えるわけではありません。はじめての街、話せない言葉、地図と違う道を走る運転手、今夜誰も自分を待っていないゲストハウス。ひとり旅の安全は、ほとんどの場合、「たぶん大丈夫」と「見知らぬ場所で本当にひとり」のあいだのすき間を埋めることです。フェイク着信は、そのための小さくて実用的な方法のひとつです。
このガイドは、航空券を予約する前からあなたを怖がらせるためのものではありません。フェイク着信が役立つ具体的な場面、出発前の準備のしかた、それ以上に大切な旅の安全対策、そして状況が本当に悪化したときにすべきことまで、ひととおりそろえた道具箱です。フェイク着信はその中の作戦のひとつで、計画のすべてではありません。
ひとり旅の人がフェイク着信を用意しておく理由
ひとり旅の人を不安にさせる相手、たとえばしつこい客引き、好奇心が強すぎる知らない人、どこまで許されるか試してくる運転手などは、たいてい「所在を誰にも把握されていない人」を探しています。ひとりで、気が散っていて、しばらく誰にも気づかれなさそうな人です。電話が鳴れば、その見立てはすぐに崩れます。あなたが誰かと連絡をとっていること、もうすぐどこかで待たれていること、言い争わずに会話を終えたり方向を変えたりする理由があることが伝わるからです。
この仕組みは身を守るためのフェイク着信の使い方でくわしく取り上げていますが、時差のある遠い国でも同じように効きます。ただ、旅には旅ならではの難しさがあります。知らない街並み、言葉の壁、そしてあなたからの連絡が途絶えてもすぐに気づいてくれる地元の知り合いがいないこと。フェイク着信アプリは、まさにそのすき間を埋めるためのもので、出発前に1分もあれば準備できます。
フェイク着信がいちばん役立つ場面
フェイク着信が力を発揮するのは、具体的で、くり返し起こるいくつかの場面です。ひとり旅の人が実際に使うのは、こんなときです。
- 暗くなってから知らない場所に着いたとき。飛行機の到着が遅れたり、バスが日が暮れてから着いたりして、宿までの道がわからない。外に出た瞬間に鳴るよう着信を予約しておけば、暗い角で地図をにらむのではなく、誰かと話しながら目的地へまっすぐ歩いている人に見えます。夜道をひとりで歩くときの安全対策は、6時間前に着いたばかりの街でもそのまま役立ちます。
- タクシーや配車サービスの様子がおかしいとき。ルートが地図と合わなくなったり、運転手が親しげというより立ち入った質問をしてきたりしたら、電話に出て、行き先と到着予定時刻を声に出して伝え、誰かが乗車状況を見守っていると話しましょう。運転手があなたの言葉をわからなくても効果があります。声の調子とスマホの画面が伝えてくれるからです。
- しつこい物売りや知らない人が引き下がらないとき。市場や路上では、きっぱり「いりません」と言っても終わらないことがあります。会話の途中で電話が鳴れば、対立も騒ぎもなく、すっきりと自然にその場を離れる理由になります。
- ゲストハウスや民泊で「待たれている人」に見せたいとき。誰とも会ったことのない場所に、特に夜遅く着くとき、ホストやフロントの人の前で「うん、今チェックインしてるところ。10分後にかけ直すね」と電話で話していると、印象が変わります。誰も知らない場所に放り込まれたわけではない、と伝わるからです。
旅先でよくあるので、もうひとつ挙げておきます。マッチングアプリや旅行者向けアプリでしか知らない相手と、実際に会うときです。マッチングアプリの安全対策のガイドで紹介しているアドバイス(人の多い場所で会う、友達に伝えておく、自分で現地まで行く)は、遠い旅先でも同じくらい大切です。はじめての街での初対面には、予約したフェイク着信を手軽な保険として加えておきましょう。
出発前のフェイク着信の準備
この方法は、その場で思いつきでやるより、必要になる前に準備しておくほうがうまくいきます。出発前か、到着直後の落ち着いたタイミングで、次のことをしておきましょう。
- それらしい発信者を選ぶ。旅の状況に合った名前にします。「お母さん」や「ホテルのフロント」など、知らない人から見て、あなたを気にかけて連絡してきそうな相手です。アプリが対応していれば写真も設定しましょう。
- 旅程に合わせて予約する。着陸する時間、タクシーを降りる時間、駅から出る時間をだいたい把握しておき、その数分後に着信を設定します。出発前に着信を設定しておけば、あとはいつでも使える状態で待っていてくれます。
- 頼る前に一度テストする。ブラウザで使える無料デモを試して、着信画面や着信音がどう見えるかを確かめておきましょう。本当に必要になったその1回に、戸惑わずにすみます。
- オフラインのメモを予備に用意する。現地の緊急番号、現地の言葉で書いた宿泊先の住所、緊急連絡先をひとつ、書き留めておきましょう。スマホの電池が切れたり、圏外になったりしたときのためです。電池の切れたスマホでは、フェイク着信は鳴りません。
信頼性について正直にお伝えしておきます。着信は電話回線を使わず自分のスマホの中で作られるので、電波やデータ通信がなくても鳴ります※。本当に頼りにする場所に着く前に、一度テストしておきましょう。
※スマホがロックされていてオフラインのときは、30秒以上先に予約した着信は確実性が下がります。
どんなアプリよりも大切な、ひとり旅の安全習慣
フェイク着信は、旅行中に用意しておける防犯アプリのなかでもいちばんシンプルなもののひとつですが、本当の習慣と組み合わせてこそ活きます。スマホを手にしていてもいなくても、ひとり旅の安全を日々支えてくれるのは、次のような習慣です。
- 旅程と現在地を共有する。出発前に、宿泊先、ルート、おおまかな予定をひとりに送り、移動日は位置情報のリアルタイム共有をオンにしておきましょう。10秒で終わり、いざというときに誰かがすでにあなたの居場所を知っている状態を作れます。
- 連絡する時間を決めておく。「着いたらLINEして」「そっちの時間で夜9時に電話して」と決めておくだけで、あなたからの連絡が途絶えたとき、誰かがすぐに気づいてくれます。これはどんな道具よりも大切です。
- 現地の緊急番号を手元に。必要になってからではなく、着く前に保存しておきましょう。緊急番号は国によって違います(EUでは112、英国では999、オーストラリアでは000、米国では911など)。日本の110番や119番は、海外ではつながりません。
- 直感を信じる。場所や人、状況に違和感があったら、それを失礼な思い込みではなく、大切な情報として扱いましょう。早めに帰ったり予定を変えたりしても、失うものは何もありません。
- 貴重品は目立たせない。現金やカードは複数のバッグに分け、知らない場所で新しいスマホやアクセサリーを見せびらかさないようにしましょう。スリが多い場所なら、少しだけ現金を入れたダミーの財布を持っておくのも手です。
状況が本当に悪化したら
はっきりくり返しておきたいことがあります。フェイク着信は対人の場面での抑止策であって、本物の緊急通報の代わりではありません。気まずい場面から上手に抜け出すための時間をくれるだけです。警察を呼んでくれるわけではなく、本当の緊急事態には役に立ちません。
本当に何かがおかしいときは:
- 日本の110番や119番ではなく、現地の緊急番号に電話する。日本の番号は海外ではつながらないので、現地の番号を着く前に保存しておきましょう。
- 人の多い公共の場所へ移動する。ひとりで解決策を考え込むより、ホテルのロビー、お店、駅など、スタッフやほかの人がいる場所へ向かいましょう。
- スタッフに直接助けを求める。ホテルやゲストハウスのスタッフ、お店の人、駅員は、こうした場面に思った以上に慣れていて、ほとんどの人がためらわずに助けてくれます。
- 日本大使館や総領事館の連絡先を控えておく。パスポートの紛失、逮捕、遠い旅先での急病など、深刻な事態で役立ちます。オフラインのメモに1行書いておくだけで、手間はかかりません。外務省の海外旅行登録「たびレジ」に登録しておくと、現地の安全情報も受け取れます。
どれも、その場での的確な判断の代わりにはなりません。話すことで状況が悪くなりそうなら、通話を最後まで続けることより、黙って距離をとることを優先しましょう。
出発前の安全チェックリスト
搭乗の10分前に、ひととおり確認しましょう。
- フェイク着信を予約済み、またはすぐ鳴らせる状態で、発信者名もそれらしく設定した
- 旅程と現在地を、信頼できる人ひとりと共有した
- 連絡する時間を決めた(決まった時刻にLINEか電話)
- 現地の緊急番号をオフラインで保存した
- 日本大使館や総領事館の連絡先を保存した
- 貴重品を複数のバッグに分け、到着時に目立つものを身につけていない
- 宿泊先の住所を、現地の言葉や文字で保存した
こうした準備をしても、ひとり旅の自由さが失われることはありません。めったに起きない小さなトラブルへの備えがもうできているので、残りの旅を思いきり気楽に楽しめる、というだけです。
この記事のポイント
- フェイク着信アプリは、ひとり旅の抑止策として働きます。忙しそうで、誰かに待たれているように見えるだけで、しつこい物売り、様子のおかしいタクシー、はじめての宿のチェックインを、たいていは無事に切り抜けられます。
- 出発前に着信を予約し、それらしい発信者名を決めておきましょう。そうすれば、その場であたふたせずに、着いた瞬間から使えます。
- どんなアプリよりも、本当の安全対策が大切です。旅程と現在地を共有し、連絡する時間を決め、現地の緊急番号を前もって保存しておきましょう。
- フェイク着信は対人の場面を切り抜けるための道具で、本物の緊急通報の代わりではありません。本当に何かあったら、人の多い場所へ移動し、その国でつながる緊急番号に電話しましょう。